ブログ

妊活とサウナ:精子形成への影響について

 

はじめに

妊活中のご夫婦からよくいただく質問のひとつに「サウナは精子に悪いのですか?」というものがあります。

精子形成と温熱環境の関係は古くから研究されており、生活習慣の見直しの中でも重要なポイントです。


精子形成と温度の関係

  • 精巣は体温より2〜4℃低い温度で正常に機能します。

  • 精子形成(造精機能)は高温に弱く、体温が高い状態が続くと精子数や運動率に影響することが報告されています。

  • 長時間の発熱や、下着・生活習慣による陰嚢の温度上昇も同様のリスクをもたらします。

  • 高温環境は精子形成過程を阻害し、一時的な乏精子症や精子運動率低下を引き起こす。

  • 発熱、下着による陰嚢温度上昇、ノートPCの膝上使用も類似のリスク因子として知られる。


サウナの影響についての研究

  • 一時的な影響

    ある研究(J Endocrinol Invest, 2013)では、週2回サウナに通う男性を3か月追跡した結果、精子数や運動率が低下しましたが、中止後6か月で回復しました。

  • 可逆性

    高温の影響は「一時的」で、恒常的な不妊を招くわけではないことが多いとされています。

    • Sauna exposure study (J Endocrinol Invest, 2013)

      10人の健常男性が週2回、80–90℃のサウナに15分間、3か月間入浴した結果:

      • 精子濃度、運動率の有意な低下を認めた。

      • ただし中止後6か月で回復、可逆性が示唆された。

    • 熱ストレスと精巣機能

      精子形成障害は一過性であり、恒常的な不妊を招くことは少ない(Jung & Schuppe, Andrologia, 2007)。


    勃起機能との関連

    • サウナは全身血流改善や自律神経調整効果により、勃起機能にむしろ好影響を与える可能性がある(Hannuksela & Ellahham, Am J Med, 2001)。

    • 高温そのものがEDを直接誘発するエビデンスは乏しい。


勃起機能との関連

  • サウナによる血流改善やリラクゼーション効果は、むしろ勃起機能にプラスの可能性が示されています。

  • 一方で、高温そのものが直接EDを引き起こすという明確な証拠はありません。


妊活中のサウナ利用のポイント

  1. 長時間・高頻度は控える(例:毎日長く入る習慣は避ける)

  2. 短時間・週1回程度なら許容範囲

  3. 妊活中は適度な利用を(どうしても入りたい場合は5〜10分にとどめる)

  4. 熱いお風呂やノートPCの長時間膝上使用も同様に注意

  5. その他 精子が精巣で作られるのに 約74日(約2.5〜3か月) かかるとされています(Amann, 2008)。精祖細胞 → 精母細胞 → 精子細胞 → 精子 へと段階的に分化。さらに精子が精巣上体で成熟し、受精能力をもつまでに 約12〜21日。合計すると 約3か月半程度 が「新しい精子が完成するまでのサイクル」。

    👉 したがって、生活習慣改善(禁煙・禁酒・温熱回避・栄養改善など)の効果が精液所見に反映されるには3か月以上必要
  6.  


まとめ

  • サウナは「一時的に精子形成に影響する」ことが知られています。

  • ただし、その影響は可逆的であり、控えめに楽しむ分には大きな問題にはなりません。

  • 妊活中の男性は、生活習慣の一部として適度なサウナ利用を意識しましょう。ただし、精子所見が芳しくない場合は食事睡眠運動習慣など全般的な見直しが必要な場合もあります。

  • 「サウナを絶対にやめなければ妊娠しない」というわけではありません。

  • ただし、**顕著に精子所見が悪い男性(乏精子症・精子運動率低下など)**には、回復の可能性を高める目的で「サウナを控えるように」と助言するのは合理的です。

  • 一方、所見に問題が少ない方や、ストレス解消目的で短時間・週1回程度利用している方には「許容範囲」と説明するクリニックもあります。

  • 参考文献

    1. Garolla A, Torino M, Sartini B, et al. Seminal and molecular evidence that sauna exposure affects human spermatogenesis. J Endocrinol Invest. 2013;36(11):968–973.

    2. Jung A, Schuppe HC. Influence of genital heat stress on semen quality in humans. Andrologia. 2007;39(6):203–215.

    3. Wong EW, Cheng CY. Impacts of environmental toxicants on male reproductive dysfunction. Trends Pharmacol Sci. 2015;36(9):664–679.

    4. Hannuksela ML, Ellahham S. Benefits and risks of sauna bathing. Am J Med. 2001;110(2):118–126.

General Clinic

Reserve
ご予約

ご来院前に事前にご予約いただくと
スムーズに診療が受けられます。
ご不明な点はお問い合わせください。

〒106-0032
東京都港区六本木6-1-20電気ビルディング2階

日比谷線、大江戸線「六本木駅」
3番出口より徒歩1分

※駐車場のご用意はございません。

pagetop