防風通聖散が肝臓に悪い？肝機能障害を引き起こした2つの実例付きで解説！

防風通聖散が肝臓に悪いのは本当か？

実は、防風通聖散と肝臓との関係性についてはまだまだ不明点が多いのが現状です。このため、現在のところ防風通聖散が肝臓に悪い影響を与えるのかどうかはっきり分かっていません。

しかし、防風通聖散による肝機能障害の報告は非常に稀なケースで、防風通聖散の服用は医薬品の中でも安全に服用できる医薬品といえます。

防風通聖散が肝臓に与える影響がはっきりとわかっていない理由

防風通聖散が肝臓に悪い影響を与えるかどうかがはっきりとわかっていない理由は上記の通りです。

特に、最近では防風通聖散は数多くの製薬会社により販売されており、容易に防風通聖散を手に入れることが出来るようになっており、防風通聖散を服用している人がどれくらいいるのかを特定するのがより難しくなっています。

そのうえ、防風通聖散に含まれる生薬が18種類と非常に多く、個人の体質によってどの生薬が合わないのかを特定するのが困難なことも、防風通聖散が肝臓にどのように影響を与えるのかを特定するのを困難にしています。

ただ、防風通聖散の服用と肝障害の間には関係がないとも言い切れず、まれに防風通聖散による薬物性肝障害を発症していると診断される人もいるのも事実です。

このことから、漢方薬の服用と関連が高いとされている肝障害症例を多く集め、これらの症例を基に防風通聖散による薬物性肝障害の実態を明らかにすべく日々研究がおこなわれているところです。

防風通聖散が脂肪肝に有用性があるという報告もある

防風通聖散の服用が肝臓に対して悪影響を与える可能性が考えられている一方で、防風通聖散には非アルコール性脂肪性肝障害（NAFLD）治療に対して有用性があることが、高知大学医学部の研究によって報告されています。

この実験では、さらに防風通聖散がインスリン抵抗性についても検討が行われ、その改善効果についても報告されています。

このように、防風通聖散が肝臓に対してインスリン抵抗性と非アルコール性脂肪性肝障害（NAFLD）の効果について肝障害を改善する効果が明らかになっています。

その一方で、防風通聖散が原因で発症したとも考えられる薬物性肝障害が報告されているので、いずれにせよ防風通聖散の服用にあたっては注意が必要といえます。

防風通聖散が引き起こした肝機能障害の実例

ここでは、防風通聖散が引き起こした肝機能障害を実例をもとに詳しく見ていきましょう。

防風通聖散を服用後2カ月目に黄疸症状を発症した37女性

症例は 37 歳の女性．肥満症に対し薬局で購入した防風通聖散を約 1 カ月間服用していた．服用開始から約 2 カ月後に黄疸を主訴に来院し，肝機能異常を認め入院となった．肝生検では門脈域と小葉内に炎症細胞浸潤を認めたが線維化は乏しく急性肝炎と診断した．防風通聖散についてリンパ球刺激試験は陽性であり，成分別ではトウキ，センキュウ，ハッカが陽性であった．DDW-J2004 のスコアリングにより薬物性肝障害と診断した．

出典：防風通聖散による薬物性肝障害の 1 例 

こちらの症例では、防風通聖散の服用後2カ月目に急性肝炎を発症した女性の例です。

このレポート内にもありますが、防風通聖散による薬物性肝障害と診断されるのは非常に稀なケースです。

とはいえ、防風通聖散が原因で肝機能障害を発症する可能性があることは忘れないようにしなければいけません。

防風通聖散の長期服用中に肝障害が出現して劇症化した35歳男性

症例 は35歳 男性. 入院10カ 月前から防風通聖散 を服用 していた. 入院3カ 月前にはじめて肝機能異常が出現. 入院6週 間前 に近医受診, この時点で肝機能障害 は増悪 していたが, 5種 の薬剤 を新たに投与され, 防風通聖散 はそのまま服用 していた. 入院1週 間前から黄疸 ・皮膚掻痒感が出現 したため当院へ入院 となった. 防風通聖散, および併用薬は入院前日まで服用していた. 入院時ALT 2996IU/l, AST 7174IU/l, T. Bil 15.1mg/dl, PT 30.6%であり, 第2病 日肝性昏睡2度 となったため劇症肝炎急性型 と診断, 血漿交換および血液濾過透析 とステロイ ドパルス療法を開始 した. この結果意識清明 とな り肝機能 も急速 に改善 したが,その後黄疸が遷延 し, 肝機能 は薬剤中止後4カ 月に正常化 した. 本症例ではもともと防風通聖散による薬物性肝障害が存在 し, そこへ併用薬の影響が加わって最終的に劇症化 に至った ものと考 えられた.

出典：防風通聖散の長期服用中肝障害が出現し劇症化に至った一例

こちらの症例では、防風通聖散を長期間服用していた35歳男性が肝障害の出現後、劇症化した症例です。

最近では、海外製のダイエット健康食品でも肝機能障害が劇症化するなどのニュースを目にし、防風通聖散でもこのような症状を見ると不安になるかと思います。

しかし、防風通聖散が肝機能障害を引き起こすのは、海外製のダイエット健康食品と比較しても稀です。副作用も非常に少なく、安心して服用できる漢方薬として広く用いられています。

なぜなら、重症肝障害を引き起こすことで話題になっている海外製のダイエット健康食品に含まれるN-ニトロソーフェンフルラミンが危険因子として厚生労働省からみなされていますが、その危険因子となるN-ニトロソーフェンフルラミンは、防風通聖散には含有されていないからです。。

ただし、まれではありますが、やはり防風通聖散が原因の肝機能障害の発生が報告されていることからも、服用にあたっては注意が必要でなのは間違いありません。

防風通聖散の服用後に調子が悪いと感じた際の取るべき対処法

防風通聖散の服用によって、少しでもいつもと違う症状があれば服用を直ちに中止し、医師の診察を受けるようにしましょう。

防風通聖散の服用が原因で肝機能障害が発生するのはまれなケースとはいえ、最近では依然と比較して漢方薬を服用する方が増加しています。

このことから、これまで以上に肝機能障害を発生する人が増えてくる可能性もあるため注意が必要です。

異常を感じた時には、自己判断せず、医師の診察を受けるようにしてください。

防風通聖散を服用時の5つの注意点

防風通聖散の服用には、肝臓への影響以外にも上記の点に注意して服用しなければいけません。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

防風通聖散の副作用に対する正しい知識をつける

防風通聖散は、肝機能障害以外にも副作用が生じることが報告されています。防風通聖散は、副作用が起きにくいといわれていますが十分注意して服用してください。

なお、防風通聖散の副作用については別記事で詳しく解説しているので、そちらを参照してください。

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服用方法を守って服用する

防風通聖散は、食間にぬるま湯で服用してください。

飲み忘れたからといって、まとめて飲むことをしないように注意しましょう。

他に服用している薬がある場合には医師に相談する

現在服用している薬がある場合には、自己判断で防風通聖散を服用しないでください。

作用が強く出すぎてしまうなど、飲み合わせに注意を要する薬があります。また、サプリなどを服用している場合も同様です。

防風通聖散の服用前に、必ず医師に相談しましょう。

持病のある方は服用前に医師に相談する

持病のある方は必ず医師に相談してから、防風通聖散を服用してください。

防風通聖散により、病状を悪化させてしまう恐れがあるからです。

長期間服用する場合には医師に相談する

防風通聖散は、効果を実感するまでには最低でも2週間。長くても、1ヶ月を目途に飲んでください。

1ヶ月服用して効果を実感しない場合には、飲み続けても良いかどうかを医師に相談しましょう。

まとめ

防風通聖散が、肝臓に悪いのかどうかについてみてきました。現在のところ、防風通聖散が肝臓に悪いとも悪くないともはっきり分かっていないというのが実情です。

一部ですが防風通聖散の服用によって肝機能障害を診断された人もいるので、服用にあたっては注意が必要です。

しかし、防風通聖散は副作用も含めて発症のリスクが低い漢方薬ですので過度に心配する必要はありません。

決して自己判断することなく、少しでも不安な症状が出た場合には医師に相談するようにしましょう。